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公的機関のイノベーションと監査業界

公的機関でイノベーションが見られない理由について、ドラッカーは以下の3点をあげている。

 

1.公的機関の成果は業績ではなく獲得した予算により評価されること

これは公的機関では、活動範囲の拡大につながることが成果として評価されることを意味している。企業活動にたとえれば、利益(=売上-コスト)ではなく、売上増加を目的としているといえる。たとえ、利益につながらない活動であっても、売上増加であれば評価されるのが公的機関の特徴のようだ。

 

2.拒否権を持つ多くのステークホルダーの意見により公的機関は左右されること

顧客、サプライヤー、従業員、銀行を主としたデットプロバイダー、株主を中心としたエクイティ・プロバイダーといったおもなステークホルダーを持つ企業では、一般的に顧客がもっとも優先されるステークホルダーと位置付けられる。これに対し、社会保障制度等に見られるように活動の成果と収入が短期的にリンクしていない公的機関は、直接サービスを提供する対象ではない市民をも満足させなければならない。ある事業が開始されれば、運用が不効率であったとしても、そこから利益を得る人間から事業の廃止・修正を拒否されるだろうし、新しい事業を開始するときには、すべての市民からその必要性を疑われるだろう。

このように公的機関は多くの人々の意見に左右されるという特徴を持つため、必然的に意思決定を避ける(=リスクを取らない)ようになってしまうといえる。

 

3.費用対効果により評価されない善行を目的としていること

飢餓撲滅運動のリーダーは、「地球上に飢えている子供がひとりでもいる限り、われわれの使命は終わらない」と言う。彼らにとって、莫大な費用がかかったとしても、飢えた子どもを助けなければならないのである。

善行を目標とすることは、活動の成果があがらなくとも問題としないことを意味している。善行を目標とすることは、どこまでいっても終わりのない行為を要求するものであり、事後的に良否を評価することができないからである。

 

財務諸表監査を行う監査法人も、資本市場の番人として公的な側面が強い組織といえる。そこでは、品質維持(=不正・誤謬(まちがいのこと)を見逃さないこと)を目的としており、その目的を達成するためには費用対効果は考えられていない。また、監査業務がもたらす成果は、不正・誤謬の発生可能性を消し投資家等の投資意思決定に資するという不明瞭なものであり、監査業務の量(=監査報酬につながる)との関連性を明確に把握することは難しい。

オリンパスや大王製紙のような問題が繰り返される中、監査業界でイノベーションを起こすことは難しいのだろうか・・・