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人材の評価

代表的な経営資源として、ヒト、モノ、カネ、ということがよく言われる。

要はこの3つを上手に活用しながら、ビジネスを取り巻く重要なステークホルダーとの様々な交換関係を長期的に維持していかなれば、ビジネスは存続しえない。

一般的な事業会社における重要なステークホルダーとして、(1)製品・サービス(プロダクト)を引き渡す代りに売上代金を提供してもらう「顧客」、(2)仕入代金を引き渡す代わりに原材料・商品を提供してもらう「サプライヤー」、(3)人件費を支払う代わりに労働力を提供してもらう「人材」、(4)利息を支払う代わりに有利子負債を提供してもらう「銀行等」、(5)配当を支払う代わりに自己資本を提供してもらう「株主」、の5者を挙げることができる。

この交換関係のいずれかひとつが適切に行われない場合、必ず別のステークホルダーとの交換関係に歪みを持つことになる。たとえば、従業員の労働力に見合わない人件費を負担した場合には、利益が出せず株主への配当が困難な状況に陥る。こうした状況が長期に亘れば、株主はそうした企業から逃げていく。株主がいない企業は、資金をすべて銀行借入に頼らざるを得ないのだが、そうはうまくいかない。銀行は会社が儲かっても一定の利息しか得ることができないかわりに、ビジネスが失敗したときのリスクをとらない。すなわち、ビジネスが失敗したときのリスクを取るステークホルダーを自分の下に置かなければ(失敗したときに出資した金が戻らない株主を企業と取引させる)、取引を行わない。もしくは、売却すれば回収が可能となる資産を担保にとる(そもそもその資産を現金化すれば借入する必要がないのだが・・・)。

このように、ステークホルダーのいずれかと一時的に適正価格・条件からかい離した取引が行われたとしても、そのほかのステークホルダーとの間で、長期的にその交換関係を維持することが不可能となり、企業は存続しえないことになる。

グローバル化した現代社会では、従業員との関係は特に注目すべきと言える。

単純な労働力を格安で提供してくれる者は、新興国を中心に数多く存在している。グローバル化が進んだ世界において、高い生活レベルを維持しなければならない先進国の労働者は、当然、新興国の労働者より高い付加価値を産み出す活動をビジネスに提供しなければ交換関係が成り立たない。先進国でビジネスをマネジメントする人間は、そうした交換関係が成り立っているか否か、人材を評価しなければならない。

それでは先進国における人材の評価はどうあるべきか。

昔と異なる経済環境に応じた人事制度が要求されていることは間違いなく、自社のビジネスにマッチした人事制度が戦略的に有効なツールとなる。堅苦しいかもしれないが、自社の人事制度を一度真剣に考えてみてもおもしろいかもしれない。