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バリュエーションの標準化

国際評価基準審議会(IVSC:International Valuation Standards Council、https://www.ivsc.org/)の年次総会が2017年10月2-4日にメキシコシティで行われたらしい。そこで、MSRB(Membership and Standards Recognition Board:会員及び基準認識理事会)が、Quality Mark(事業評価における専門称号)の開発についての報告・検討をしている。

この報告及び検討の背景として、事業評価につき、アプレイザーのクオリティを保証する手段が市場に存在していないことが大きな問題との認識があるようだ。これは、価値評価が妥当であったかどうか、事後的に検証する仕組みとして、価値評価に関わる一定のルールが必要だ、ということだろう。

一方で、リーマンショックの際に、格付機関や監査法人において寡占市場となっていたことから、格付、監査業界において多様な意見が生まれなかったため、被害が増幅されたとの意見もある。すなわち、一定のルールを作ることにより、変化する市場とミスマッチであることにアプレイザーが疑問を持たず(認識していたとしてもコンプライアンスを重視するあまり基準に逃げ込むケースも含む。)、真に妥当な価値評価が行われなくなってしまう問題である。

IFRSにおいて公正価値の評価を定期的に行わなければならないことや、M&Aが頻繁に行われるようになった現代社会への対応等、バリュエーションの客観性を維持するための仕組みは重要性を増している。アプレイザーの創造性を失わせることなく、客観性を持った価値評価が適切に行われるためのルール作りが世界的に必要なんだろう。

尚、日本においては、そもそもバリュエーションの専門家組織(VPO:Valuation Professional Organization)が存在しないため、Quality Markを取得する母体がない状況にあるようだ。IVSCにおける日本からの意見発信等、事業評価を中心とした専門家組織を創設することが早急に求められることになりそうだ。