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資金調達における2つの問題

資金調達する際には、(1)他人資本(負債)による調達=デットファイナンス、(2)自己資本による調達=エクイティファイナンス、と大きく2つに分類できる。

顧客、サプライヤー、従業員との交換関係によって成り立つビジネスにおいて、キャッシュ・フローのミスマッチという問題(前回の投稿参照)をどう対応するのか、経営者にとって避けては通れない道である。

当然、デットファイナンスもしくはエクイティファイナンスで対応するのだが、両者のバランスをどう考えるべきか、という問題が次に生じる。この問いは、(ア)資本の期間構造の問題と(イ)資本のリスク負担構造の問題に分類される。

(ア)資本の期間構造の問題

調達した資金はビジネスへ投資として投下されるが、このとき調達した資金の返済期限と投資の回収期限をマッチさせることが大切となる。たとえば、1年後に返済する予定の資金(流動負債)を1年超かかって回収する投資(固定資産)に投下することはできない。きちんと返済と回収の期間構造を考えることが、デットとエクイティのバランスを決定するポイントとなる(金融機関では、デュレーション・コントロールとしてきちんと資本の期間構造の問題へ対応を行っている。)

一般的には、流動比率(=流動資産/流動負債)により、当該問題への個別企業の対応状況が評価される。

(イ)資本のリスク負担構造の問題

原則として、ビジネスの価値がどう変動しようと、銀行を中心とするデットホルダーは自らの取り分は上下しない。一方で、活動を停止した会社に残った純財産については、まずデットホルダーへ優先的に弁済される。これとは逆にエクイティホルダーは、ビジネスの価値が高まれば自らの取り分は増加するが、デットホルダーが会社の財産を抜いた後残ったものにしかありつけない。ただし、ビジネスが縮小し、債務超過のように会社の純財産がマイナスとなるケースにおいては、デットホルダーも満額は返済されない。

上記の内容からわかることは、デットホルダーにとって、エクイティホルダーの取り分を示す会社の純財産(会計上は純資産と言われる)は、ビジネスが失敗したときの自らの取り分に対する防波堤である。純財産が多ければ多いほど、デットホルダーは安心して資金をビジネスに提供することができることになる。

一方で、上記のとおり、ビジネスの変動(リスク)に対して純財産という防波堤を持つデットの調達コストは、防波堤を持たないエクイティに比して低くなるのはご理解いただけるだろう(負債の調達コストに比して、株主の資本コストが高いといわれることと同義)。

この結果、資金調達コストを小さくするためには、デットファイナンスの割合を高めることが必要だが、一定のエクイティホルダーがいなければデットホルダーはビジネスに資金提供できない。このバランスをとることも資金調達を行う上では重要な問題である。

 

経常損益は、純粋にビジネスが生み出す付加価値である営業損益に、銀行を中心としたデットホルダーとの交換関係を反映したもの(支払利息が営業外損益に計上される)である。

従って、一般的には、ビジネスの質に資金調達の巧拙を加えた評価指標として経常損益を考えることができる。

あなたの会社の資金調達(ファイナンス)の状況はどうでしょう?