東証が上場基準を緩和
東京証券取引所は12月20日に1部2部市場の上場審査基準を来年3月から大幅に緩和すると発表した。
上場審査を、「2年間で経常利益が総額5億円以上」であれば受け付ける等、中堅・中小企業にエクイティファイナンスによる資金調達(リスクマネーの調達)の道を広げることが狙いだそうだ。さらに時価総額によるハードルが、以前は1000億円以上必要だったのが、500億円以上見込めれば申請が可能になる見通しとのこと。
経済活動において重要な資源は、労働(ヒト)と資本(カネ)に大きく分類される。
現在の豊かな日本を評価した結果である円高と、減少していく人口により、世界の中で日本が有している「労働」という資源はコストパフォーマンスでは他国に圧倒的に劣る状況にある。すなわち、海外と同じ製品を日本人が一生懸命作ったとしても、外貨ベースでの労働コストが高いため、価格競争で負けることになる。
人口減少を前提とした経済において、「労働」の質を高めるか「資本」の有効活用をする以外に、長期的に豊さを維持する方法はないと思われる。
既存の市場・プロセスを改革し付加価値の高い製品・サービスを供給する企業を新規に創出することは、国家として「労働」の質を高め、「資本」の有効活用につながるひとつの手段と言える。
ご承知のとおり、前記の企業は一般的にはベンチャー企業と呼ばれ、ビジネスの拡大に伴い資金(リスクマネー)に対するニーズが大きい。こうした企業に適切に資金が供給される仕組みは、日本の豊さを長期的に維持するうえでは必要不可欠である。
オリンパス、大王製紙のような不正等による問題はあるが、すべての市場参加者に問題があるわけではない(むしろごく少数)。過去の不正を基準に一律に上場審査を必要以上に厳格にすることは、我が国の長期的な繁栄にはつながらない。むしろ、市場を事後的にチェックする幹事証券会社、取引所、公認会計士(監査法人)が、様々な企業の実態に応じたチェックを行うことのほうが市場全体としてのコストは安く、効率的な国家の運営につながると思う。
上場審査基準の緩和による新たな高付加価値創出企業の出現を期待する。