最近の監査上の論点について
企業会計審議会監査部会において、最近の事例等を踏まえた課題について議論がなされたようだ(http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/siryou/kansa/20120725/01.pdf)。
この中でそれぞれの最近の事例等に応じてげられた課題は以下のとおりであるが、主に議論されている内容は、「監査の有効性」の向上について業界全体として取り組んでいくというものである。
粉飾等の不正を見逃さないという「監査の有効性」は、株式市場やその他資本市場において、投資家が安心して取引を行うためにとても重要な要素である。実際、自分自身でも、投資銀行業務に携わり世界の様々な企業等に投融資を検討していた当時、監査報告書がある投融資先とない投融資先とでは大きく安心感が異なった記憶がある。監査は、投融資に対して投資家が持つ様々な不安や疑念を消してくれ、その分資金調達コストが削減される効果を持っていると言える。
一方で、「監査の効率性」という議論がある。当たり前だが、監査によって削減される資金調達コストを上回る監査費用が発生する場合、監査を受けるメリットが企業にはない。監査費用は、資金調達コストの削減額が上限であり、その中でのみ監査手続は実施可能である。限られた監査資源を効率的に利用することが「監査の効率性」につながることになる。
上記の2つの側面から、有効性を維持しながら効率的(必要最低限の手続)に監査を行うことが最善である、という当たり前の話なのだが、話はそう簡単には終わらない。
各企業で経営環境や内部統制は異なり、必要最低限の監査手続が企業ごとに異なってくるため、すべての企業に一律に監査手続を義務付けるという量的解決策は監査の効率性を低下させる。監査の効率性の低下は、監査事務所の経営基盤を疲弊させ、監査の有効性にも大きな影響を与える。監査手続の量の増加と監査の効率性の維持を両立させるためには、監査手続の質を落とすしか方法はないためである。
上記のような問題に対して、リスク・アプローチ等、様々な施策がうたれてきたが、監査の有効性という投資家からの大きな期待に対し、監査の効率性という課題を公認会計士業界全体でクリアしなければならない。
(1)オリンパス事案
・監査チームによる会計不正のリスク評価及び監査実施に対する法人本部による適切なモニタリングをどのように確保するか。
・法人本部が監査現場の状況を的確に把握するための体制をどのように確保するか。
・ 監査事務所内の審査の適切な実施(実効性ある本部審査ルールの整備等)をどのように確保するか。
・ M&Aやフォレンジック(不正対応)チーム等の専門部署の機動的な活用のあり方についてどう考えるか。
・監査人交代時の実効性ある引継ぎの徹底をどのように図るか。
・ 監査事務所交代時における開示の強化をどのように図るか。
・会計不正リスクが高い場合の適切な受任手続及び受嘱審査をどのように確保するか。
・監査人交代時の実効性ある引継ぎの徹底をどのように図るか。
・ 監査事務所交代時における開示の強化をどのように図るか。
・ 監査チームによる会計不正のリスク評価及び監査実施に対する法人本部による適切なモニタリングをどのように確保するか。
・ 監査事務所内の審査の適切な実施(実効性ある本部審査ルールの整備等)をどのように確保するか。
・残高確認状の内容等の見直し、担保設定状況等に係る記載の徹底をどのように図るか。
・金融商品等の評価や企業価値評価等における専門家の活用のあり方について、どのように考えるか。
(2)不正会計の端緒が発見されたが看過したケース
・矛盾した監査証拠があった場合等における適切な職業的懐疑心の発揮をどのように図るか。
・矛盾した監査証拠があった場合等における適切な職業的懐疑心の発揮をどのように図るか。
・証憑類の偽造等が関係先と口裏合わせをしつつ巧妙に行われるという循環取引の特性を踏まえた監査手続のあり方について、どう考えるか。
・ 取引先の監査人(同法人及び他法人)との連携のあり方をどのように考えるか。
(3)会計不正の態様等に応じた監査手続が実施されなかったケース
・売上の前倒し計上が想定される場合の実地棚卸手続の実施等、疑われる会計不正の態様等に応じた監査手続の実施をどのように図るか。
(4)監査法人における情報収集体制
・大手監査法人のHPトップページにおける情報受付がわかりづらい