中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)の実施状況
この法律の対象となる 金融機関がH24.3.31までの2年強の期間に行った債務者への対応についてまとめた報告が金融庁からリリースされた。
http://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20120719-2/01.pdf
債務者からのリクエストに応じて、原契約のamendmentやwaiverなどにより、リスケジュール・金利減免等の対応が行われたと思う。
この中で、中小企業からのリクエストに対して応じた比率は、メガバンク等の主要行等より、信金や信組といった中小金融機関のほうが相対的に高い。
おそらく各金融機関の担当者は、リクエストのあった貸付金の回収可能性につきギリギリの判断が求められ、債務者の現状や将来性を把握するうえでかなりの時間を使わなければならなかったと思う。 行員の給与水準の高い大手金融機関では当然行員一人当たり時間コストが高く、当該法令への対応は難しかったのではないか、と想定される。金融機関が貸付条件の変更等を謝絶する際の理由の大部分を、「申込み日から3ヶ月経過して謝絶とみなされたもの」が含まれていることも、多忙な中、当該法令への対応を迫られていたのではないか、と想像される。
一方で、住宅ローン借入者からのリクエストに対して応じた比率は、地銀が最も低い。
大手金融機関の基盤は大都市であり、中小企業ではない組織に属する個人への住宅ローンの比率が相対的に高いことが想定される。一方で、都道府県別に区切られた地盤を主たる営業エリアとする地銀は、地方企業への勤務者が住宅ローン借入者の中心である。 地銀も、定期的に監督官庁である金融庁のモニタリングを受け、当該法令へのコンプライアンスも事後的にチェックされる立場にある。このため、申込み日から3か月経過するといったタイムアウトを除き、きちんとした理由もなく謝絶することは考えにくい。とすると、リストラや円高による工場閉鎖等により、こうした地方の住宅ローン借入者の収入源が絶たれているケースが多いのではないか、と想定する。
中小企業からのリクエストに対しては主要行等を上回る対応を行っている地銀も、住宅ローン借入者に対しては主要行等より厳しい判断をくだしている。
地方の労働者の苦境はまだ続きそうだ。