日本の家電業界に見る今後の先進国の経営意思決定システムの変化

過去、日本の家電業界は、上場会社が稼ぎ出す利益の全体のうち、かなりの割合を占める産業であったと思う。しかし、日本の誇る技術力を基礎に、他国の家電メーカーが追随できないレベルの製品を創出してきたが、ここ数年で様相は激変している。シャープに限らず、ソニーがここ数年継続して多額の損失を計上しているほか、その他の家電メーカーも厳しい経営環境におかれていると思われる。

この原因の一つに、日本企業の特徴である集団的意思決定システムがあるように思う。
この集団的意思決定システムは、根回しに代表されるように組織としての意思決定をする前に行動し始める点に特徴がある。数多くの利害関係者と調整しながら内容が固まって行くため、素早くリスクを抽出しながらそれに対応することができる。この結果、最終の意思決定が行われる時点ではすでに製品・サービスはできあがっており、明日にでも市場に投入ができる状態になっていることが多い。このようにして、今まで日本企業は、欧米企業に比べてスピード感をもった経営をしていたと思う。
一方でこのシステムには、リスクテイクできないという大きな欠点がある。リスクテイクする時には、様々な人間の多面的な検討の結果抽出されたリスクを、誰かが切り捨てなければならない。切り捨てる人間は、組織の中でリスクに対する責任を追うことになる。このため、抽出されたリスクやニーズをすべて織り込んだ形での製品・サービスが開発されることになる。日本の製品の機能が増えすぎて分かりづらくなっていったのはこの意思決定システムが作用した結果のように思う。

先進国の今の消費者はワガママであり、すべての消費者を満足させることは不可能に近い。人気コメディアンのビルコスビーも、

I don’t know the key to success,
but the key to failure is trying to please everybody.
              Bill Cosby

成功への鍵が何かは知らないが、
失敗への鍵は全員を喜ばせようとすることである。
               ビル・コスビー(アメリカのコメディアン)

と言っている。自己実現へと欲求のレベルが高まった先進国では、さらに消費者のニーズは細分化されており、この点でも同様のことが言える。これからの先進国のマーケットでは、多様化した少数のターゲットに絞った製品開発やサービス作りをしなければならない。すなわち、経営意思決定において、より一層スピード感をもってリスクテイクすることが必要と言える。

集団的意思決定システムから抜け出すことが、これからの日本企業には必要である。

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欧州利下げに限界論

ゴールドマンサックスの調査部が、「政策金利の変動が貸出金利にもたらす効果はスペインやイタリアでは減少し、ドイツやフランスでは拡大している」と分析しているらしい(今朝の日経国際2面)。

ある国の内部においてもっとも信用力が高い主体は、企業でも特定の家計(個人)でもなく国家であるという考え方のもとでは、一国の政策金利はもっとも低い貸出金利であり、国内におけるその他の主体に対する貸出のベースとなる指標である。具体的には、貸出先の返済のリスクの程度に応じて、この政策金利に上乗せ(スプレッド)を行い、最終的な貸出金利が決定される。このため、通常であれば、政策金利の変動が貸出金利にもたらす効果は、同じ前提条件のもとでは、いずれの国においても変わらないはずである。

今回のゴールドマンサックスの調査部の分析が意味するところは、資本市場が貸出金利を決定する際の前提条件が、スペイン・イタリアと、ドイツ・フランスで異なっていると思われる。

スペイン・イタリアは財政問題を抱えており、今後ユーロへの依存度が高いことが想定されるため、一国としての政策金利にあまり意味がない。一方で、ドイツ・フランスはユーロ圏を支える大国であり、これらの国の政策金利はユーロ全体の今後へ大きな影響を及ぼす。個人的見解だが、ゴールドマンサックスの調査部の分析は、こうした見方を資本市場が強めていることを示唆していると思われる。

欧州のシステムは、PIIGSとドイツ・フランスという経済状況や財政体質が全く異なる国家が、低い壁を残してひとつになっているところに特徴がある(一定の壁を残しつつ様々な人々が暮らすシェアハウスをイメージしてもらえるとよいかもしれない)。

景気上昇期においてはこのシステムは問題となることは少ないが、景気下降期においては資源の再配分という大きな問題が頭をもたげる。

景気下降期においては、EU全体の資源の価値が減少していくが、個々の国でみれば減少が大きい国もあれば、小さい国もある。もしくは一部の国では資源が増加するケースもある。たとえば、生産性の低いスペイン・イタリアといった国に投下した資本を引き揚げ、より生産性の高いドイツ・イタリアに資本投下したほうが、その後の成果が大きくなると予想される場合である。

このように資本主義においては、資源はそれをより有効に活用できる場所へ移動が促されるため、資源の再配分において、配分に受けることができる国とできない国がでてくる。景気下降局面においては、自由主義経済にまかせているとEUにおいてこうした資源の再配分が経常的に行われ、常にスペイン・イタリアの財政問題はくすぶり続けると思われる。

先日の日経新聞において、同じゴールドマンサックスのジム・オニール氏は、次のように言っている。

「・・・ドイツの迅速な方針転換、欧州中央銀行(ECB)の市場介入のいずれかか双方がない限り問題は広がる。ドイツは欧州統合を進めたいが、追加の支払は嫌なのだ。市場は常にそこを見ている。ユーロ危機は欧州政治の機能不全で起きている。」

個人的見解だが、資本市場を中心に行われる資源の再配分を政治主導で修正することができるか否か、というところが今後の欧州問題のポイントのように思う。すなわち、欧州のシステム(EU)の利益を享受しているドイツ・フランスが自らの得た利益の一部をスペイン・イタリアに分け与えることを、ドイツ・フランスの首脳陣はそれぞれの国民に納得させられれば欧州問題は解決へと向かうだろう。

欧州各国の政治家はとても困難な局面に面していると思う。

 

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最近の監査上の論点について

企業会計審議会監査部会において、最近の事例等を踏まえた課題について議論がなされたようだ(http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/siryou/kansa/20120725/01.pdf)。

この中でそれぞれの最近の事例等に応じてげられた課題は以下のとおりであるが、主に議論されている内容は、「監査の有効性」の向上について業界全体として取り組んでいくというものである。

粉飾等の不正を見逃さないという「監査の有効性」は、株式市場やその他資本市場において、投資家が安心して取引を行うためにとても重要な要素である。実際、自分自身でも、投資銀行業務に携わり世界の様々な企業等に投融資を検討していた当時、監査報告書がある投融資先とない投融資先とでは大きく安心感が異なった記憶がある。監査は、投融資に対して投資家が持つ様々な不安や疑念を消してくれ、その分資金調達コストが削減される効果を持っていると言える。

一方で、「監査の効率性」という議論がある。当たり前だが、監査によって削減される資金調達コストを上回る監査費用が発生する場合、監査を受けるメリットが企業にはない。監査費用は、資金調達コストの削減額が上限であり、その中でのみ監査手続は実施可能である。限られた監査資源を効率的に利用することが「監査の効率性」につながることになる。

上記の2つの側面から、有効性を維持しながら効率的(必要最低限の手続)に監査を行うことが最善である、という当たり前の話なのだが、話はそう簡単には終わらない。

各企業で経営環境や内部統制は異なり、必要最低限の監査手続が企業ごとに異なってくるため、すべての企業に一律に監査手続を義務付けるという量的解決策は監査の効率性を低下させる。監査の効率性の低下は、監査事務所の経営基盤を疲弊させ、監査の有効性にも大きな影響を与える。監査手続の量の増加と監査の効率性の維持を両立させるためには、監査手続の質を落とすしか方法はないためである。

上記のような問題に対して、リスク・アプローチ等、様々な施策がうたれてきたが、監査の有効性という投資家からの大きな期待に対し、監査の効率性という課題を公認会計士業界全体でクリアしなければならない。

 

(1)オリンパス事案

・監査チームによる会計不正のリスク評価及び監査実施に対する法人本部による適切なモニタリングをどのように確保するか。

・法人本部が監査現場の状況を的確に把握するための体制をどのように確保するか。

・ 監査事務所内の審査の適切な実施(実効性ある本部審査ルールの整備等)をどのように確保するか。

・ M&Aやフォレンジック(不正対応)チーム等の専門部署の機動的な活用のあり方についてどう考えるか。

・監査人交代時の実効性ある引継ぎの徹底をどのように図るか。

・ 監査事務所交代時における開示の強化をどのように図るか。

・会計不正リスクが高い場合の適切な受任手続及び受嘱審査をどのように確保するか。

・監査人交代時の実効性ある引継ぎの徹底をどのように図るか。

・ 監査事務所交代時における開示の強化をどのように図るか。

・ 監査チームによる会計不正のリスク評価及び監査実施に対する法人本部による適切なモニタリングをどのように確保するか。

・ 監査事務所内の審査の適切な実施(実効性ある本部審査ルールの整備等)をどのように確保するか。

・残高確認状の内容等の見直し、担保設定状況等に係る記載の徹底をどのように図るか。

・金融商品等の評価や企業価値評価等における専門家の活用のあり方について、どのように考えるか。

 

(2)不正会計の端緒が発見されたが看過したケース

・矛盾した監査証拠があった場合等における適切な職業的懐疑心の発揮をどのように図るか。

・矛盾した監査証拠があった場合等における適切な職業的懐疑心の発揮をどのように図るか。

・証憑類の偽造等が関係先と口裏合わせをしつつ巧妙に行われるという循環取引の特性を踏まえた監査手続のあり方について、どう考えるか。

・ 取引先の監査人(同法人及び他法人)との連携のあり方をどのように考えるか。

 

(3)会計不正の態様等に応じた監査手続が実施されなかったケース

・売上の前倒し計上が想定される場合の実地棚卸手続の実施等、疑われる会計不正の態様等に応じた監査手続の実施をどのように図るか。

 

(4)監査法人における情報収集体制

・大手監査法人のHPトップページにおける情報受付がわかりづらい

 

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中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)の実施状況

この法律の対象となる 金融機関がH24.3.31までの2年強の期間に行った債務者への対応についてまとめた報告が金融庁からリリースされた。

http://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20120719-2/01.pdf

債務者からのリクエストに応じて、原契約のamendmentやwaiverなどにより、リスケジュール・金利減免等の対応が行われたと思う。

この中で、中小企業からのリクエストに対して応じた比率は、メガバンク等の主要行等より、信金や信組といった中小金融機関のほうが相対的に高い。

おそらく各金融機関の担当者は、リクエストのあった貸付金の回収可能性につきギリギリの判断が求められ、債務者の現状や将来性を把握するうえでかなりの時間を使わなければならなかったと思う。 行員の給与水準の高い大手金融機関では当然行員一人当たり時間コストが高く、当該法令への対応は難しかったのではないか、と想定される。金融機関が貸付条件の変更等を謝絶する際の理由の大部分を、「申込み日から3ヶ月経過して謝絶とみなされたもの」が含まれていることも、多忙な中、当該法令への対応を迫られていたのではないか、と想像される。

一方で、住宅ローン借入者からのリクエストに対して応じた比率は、地銀が最も低い。

大手金融機関の基盤は大都市であり、中小企業ではない組織に属する個人への住宅ローンの比率が相対的に高いことが想定される。一方で、都道府県別に区切られた地盤を主たる営業エリアとする地銀は、地方企業への勤務者が住宅ローン借入者の中心である。 地銀も、定期的に監督官庁である金融庁のモニタリングを受け、当該法令へのコンプライアンスも事後的にチェックされる立場にある。このため、申込み日から3か月経過するといったタイムアウトを除き、きちんとした理由もなく謝絶することは考えにくい。とすると、リストラや円高による工場閉鎖等により、こうした地方の住宅ローン借入者の収入源が絶たれているケースが多いのではないか、と想定する。

中小企業からのリクエストに対しては主要行等を上回る対応を行っている地銀も、住宅ローン借入者に対しては主要行等より厳しい判断をくだしている。

地方の労働者の苦境はまだ続きそうだ。

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SMBC日興への処分勧告と独立性の問題

SMBC日興に対してSECからJFSAに対する処分勧告が提出された。同社の営業部門が上場企業による公表前の増資情報を担当部門から入手したうえで、個人投資家らに増資で発行される新株を購入するよう勧誘していた行為が、金商法(インサイダー取引規制)に違反すると判断されたようだ。

金融機関には、チャイニーズウォール(非公開情報を知りうる立場にいる引受部門と営業部門の情報共有がされてしまうと、インサイダー取引に使用されているとみなされかねないことに対応したもので、証券界の自主ルールである。)が存在している。 SMBC日興が行った行為は、このチャイニーズウォールの趣旨に反する行為であったと思われる。

先日、中央三井アセット信託銀行においても同様の問題を指摘されていたが、チャイニーズウォールを飛び越えようとするインセンティブは常に存在している。 複数の事業を有する大きな組織において、外部から入手した情報を社内で共有し、組織全体で活用することは利益率を高める手っ取り早い方法である。 人間の活動において「情報」は最も重要な経営資源のひとつであることが、その理由のひとつである。例えば、基軸通貨を有する米国は、世界中の米ドルの動きを把握できるため、マカオにある北朝鮮の資金口座を凍結することができたとも言われている(カネの動きは、交換という経済活動を表象している)。

今回の記事を見て、リーマンショックを境に、自由資本主義の限界や金融機関のモラルハザード等さまざまな理由から、情報の取扱いに対する当局の監視の目が強まっていることを感じた。

我々公認会計士に対する独立性を確保するための規制(利害関係のあるクライアントの監査を受嘱することはできない。)も同様の趣旨である。先日、ECが監査の規制の見直しに関する報告を提出した。その内容に、コンサルティング、税務等のサービスを行う大きなネットワークに加入しながら、大規模な上場会社(時価総額10億ユーロ超)の監査を行うことができない、との規制案があった。すなわち、監査以外の収入・関係をクライアントと持つことを一切認めず、公認会計士に各サービスへの専業化を促すものと感じた。

これと同様の規制が金融業界に導入された場合、チャイニーズウォールが設定される事業ごとに人的関係、資本関係等のない事業体へと分離させられることが予想される。金融機関におけるユニバーサルバンクという戦略が近い将来終焉を迎えるとともに、その他の産業においても強固な個人間の信頼関係に基づく緩やかな取引関係が今後はビジネスの鍵になるような気がした。フェイスブックのような個人間の信頼関係に基づく緩やかな関係をつくるツールが、もてはやされているのもそうした時代の流れを反映したものなのか・・・

 

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円高と海外進出

ZEROで企業の海外進出についての映像が流れた。自動車部品をつくる工作機械メーカーが、昨年から続く円高に苦しんだ結果、タイへ進出するという話だ。そこで、社長が懸念していた技術の現地国への流出に対して、高度な技術を要する一部の作業は日本に残すという対策を取っている別の企業が紹介された。
日本の経営者の方々は、今後の国内マーケットは将来縮小へ向かうというビジョンを持っていると思う。人口動向は将来的経済成長の重要なファクターであり、高齢化・少子化をとめることができない日本では、過去経験したような経済成長(量的な拡大)は今後ないと言える。すなわち、モノを作るうえでその原価の大部分を占める労働力およびエネルギーを欠く日本では、大量生産による薄利多売という国家戦略はフィットしない。質で勝負するしかなく、付加価値の高いモノを作りだす以外、子供たちの輝かしい未来はないのである。
円高が固定化すれば、相対的に付加価値の低い作業は海外へ流れ、相対的に付加価値の高い作業は国内に集積されることになる。言い方を変えれば、円高の継続により、日本は高い付加価値を生み出す人材に適した環境へと変化せざるをえなくなっていく。具体的には、バイオテクノロジー、IT、金融、環境(省エネ)技術といった産業は労働者一人当たりの付加価値が高く、円高が継続した後の日本において経済成長の中心となると想定される。現に、ベンチャーキャピタルは、こうした産業に属する企業への投資割合が高い。
政府の円高容認は、国内の低付加価値作業を海外へ追いやり、高付加価値作業へ国民全体をシフトさせるという意味を持つ。戦後の復興を成し得た父母の世代に負けないように、昨日よりも今日進歩することを目標(より高付加価値を創出できるように)に円高を乗り越え、子供たちへこの豊さを伝えていきたい。
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資金調達における2つの問題

資金調達する際には、(1)他人資本(負債)による調達=デットファイナンス、(2)自己資本による調達=エクイティファイナンス、と大きく2つに分類できる。

顧客、サプライヤー、従業員との交換関係によって成り立つビジネスにおいて、キャッシュ・フローのミスマッチという問題(前回の投稿参照)をどう対応するのか、経営者にとって避けては通れない道である。

当然、デットファイナンスもしくはエクイティファイナンスで対応するのだが、両者のバランスをどう考えるべきか、という問題が次に生じる。この問いは、(ア)資本の期間構造の問題と(イ)資本のリスク負担構造の問題に分類される。

(ア)資本の期間構造の問題

調達した資金はビジネスへ投資として投下されるが、このとき調達した資金の返済期限と投資の回収期限をマッチさせることが大切となる。たとえば、1年後に返済する予定の資金(流動負債)を1年超かかって回収する投資(固定資産)に投下することはできない。きちんと返済と回収の期間構造を考えることが、デットとエクイティのバランスを決定するポイントとなる(金融機関では、デュレーション・コントロールとしてきちんと資本の期間構造の問題へ対応を行っている。)

一般的には、流動比率(=流動資産/流動負債)により、当該問題への個別企業の対応状況が評価される。

(イ)資本のリスク負担構造の問題

原則として、ビジネスの価値がどう変動しようと、銀行を中心とするデットホルダーは自らの取り分は上下しない。一方で、活動を停止した会社に残った純財産については、まずデットホルダーへ優先的に弁済される。これとは逆にエクイティホルダーは、ビジネスの価値が高まれば自らの取り分は増加するが、デットホルダーが会社の財産を抜いた後残ったものにしかありつけない。ただし、ビジネスが縮小し、債務超過のように会社の純財産がマイナスとなるケースにおいては、デットホルダーも満額は返済されない。

上記の内容からわかることは、デットホルダーにとって、エクイティホルダーの取り分を示す会社の純財産(会計上は純資産と言われる)は、ビジネスが失敗したときの自らの取り分に対する防波堤である。純財産が多ければ多いほど、デットホルダーは安心して資金をビジネスに提供することができることになる。

一方で、上記のとおり、ビジネスの変動(リスク)に対して純財産という防波堤を持つデットの調達コストは、防波堤を持たないエクイティに比して低くなるのはご理解いただけるだろう(負債の調達コストに比して、株主の資本コストが高いといわれることと同義)。

この結果、資金調達コストを小さくするためには、デットファイナンスの割合を高めることが必要だが、一定のエクイティホルダーがいなければデットホルダーはビジネスに資金提供できない。このバランスをとることも資金調達を行う上では重要な問題である。

 

経常損益は、純粋にビジネスが生み出す付加価値である営業損益に、銀行を中心としたデットホルダーとの交換関係を反映したもの(支払利息が営業外損益に計上される)である。

従って、一般的には、ビジネスの質に資金調達の巧拙を加えた評価指標として経常損益を考えることができる。

あなたの会社の資金調達(ファイナンス)の状況はどうでしょう?

 

 

 

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決算書とステークホルダー

企業が存続していく上で次の五者(ステークホルダー)は絶対欠かせない存在である。

(1)顧客・・・製品・サービスを提供し、売上金を受け取る

(2)サプライヤー・・・製品・サービスの原資(原材料、外注先からの労働力等)を受け取り、仕入代金を支払う

(3)従業員(正確にはその他経費の支払いの相手先も含むが、ここでは最も重要なステークホルダーとして従業員に絞る)・・・労働力を受取り、人件費を支払う

(4)銀行(デット・プロバイダー)・・・有利子負債を受取り、元利を支払う

(5)株主(エクイティ・プロバイダー)・・・リスクをとる資本を受取り、出資・配当を支払う

すなわち、顧客とサプライヤーとの交換により、製品・サービスの骨格ができあがり、さらに従業員が加わり事業(ビジネス)ができあがる。まだこれでは企業になりえない。なぜならば、顧客から受け取る売上金でサプライヤーや従業員に対する支払いを行うが、通常ビジネスにはキャッシュフローのミスマッチが当たり前だからである。例えば、顧客からの入金は製品・サービスを提供してから3か月後であるのに、サプライヤーへの支払いは翌月、従業員への支払いは毎月、なんていうケースがある。この資金繰り上のミスマッチを銀行と株主の資金でどう埋めるか、という問題は実際の経営上はとても大事な問題である(資金が枯渇したら終わりであり、黒字倒産ということもある。cash is king)。

上記のとおり、重要なステークホルダーたちと、重要な経営資源とその見返りを交換しながらビジネスは成長していく。

ここで注意しなければならないことは、適切な交換関係を維持できなければ企業は長期的に成り立たないということである。例えば、本来請求すべき金額を顧客に請求できなければ、仕入代金、人件費、元利金の返済、株主への出資・配当の払戻しのいずれかにしわよせがくる。適切な交換が行われないと知ったステークホルダーは、企業に必要な経営資源を提供することはなく、必然的に企業は成り立たなくなる。

経営(マネジメント)とは、この重要なステークホルダーたちとの交換が適切に行われていることを常にチェックし、修正することにその本質がある。

決算書は、彼らのとの交換関係を数字で表現してくれる便利なツールである。

・売上総損益=顧客との交換を表現する売上-サプライヤーとの交換を表現する売上原価(製品・サービスの質を表現。顧客・サプライヤーとの交換関係が誤っているケースでは適切な売上総利益を確保できない(もしくは売上総損失))

・営業損益=製品・サービスが持つ付加価値である売上総損益―従業員との交換を表現する人件費(ビジネスの質を表現。従業員との交換関係がおかしい場合、適切な営業利益にならない(もしくは営業赤字)

きちんと営業利益が出ていなければ、企業は存在意義がない。ビジネスをやればやるほど持ち出しが増え、銀行、株主への支払利息・元本返済や配当・出資の払戻しが適切にできなくなるのである。

経営者の第一義的な責任は、(1)適切な営業利益を出せているのかをチェックし、出せていないもしくは出せない見込みに対して、(2)顧客、サプライヤー、従業員との交換関係をもう一度見直す、ということにある。

みなさんの経営する企業もしくはステークホルダーとして関係を持つ相手先はどうでしょう?

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企業の利き手

企業にも右手と左手といった利き手がある。取り扱っている製品・サービス(プロダクト)の種類によって、大きく利き手が異なるため、新プロダクトを開発するときには気をつけなければならない。

具体的には、プロダクトは(1)テーラーメイド型および(2)レディメイド型に大きく大別される。前者は、クライアントのニーズに応じて仕様を変えるプロダクトをいい、後者は広く一般に汎用される定型的なプロダクトをいう。情報通信産業のなかでも、システム構築等コンサルティングを中心に行う企業におけるプロダクトはテーラーメイド型であり、パッケージソフトの開発・販売を行う企業におけるプロダクトはレディメイド型といえる。同じ産業内においても、プロダクトの分類が異なることに注意が必要である。

テーラーメイド型プロダクトを取り扱う企業において、いかにクライアントのニーズにマッチしたプロダクトを作り上げることができるか、ということがマーケットから要求される。従って、そこに属する人材に要求される知識・スキルは、(ア)営業、生産、購買、管理等、幅広いエリアに対する一定の知識、(イ)クライアントをはじめとする複数の利害関係者にきちんと情報を伝えるコミュニケーション・スキル、(ウ)クライアントをはじめとする利害関係者を自らの狙った方向へ行動させるコンサルテーション・スキルであり、後述するレディメイド型プロダクトを扱う企業の人材に比して相対的に高度な知識・スキルを要求される。また、各担当者はクライアントと交渉するなかで様々な要求に迅速にこたえるべく大幅な権限移譲が必要とされるため、こうした企業に適した組織はクライアントタイプ別に営業、生産、購買、管理等を分割した組織(ちょっとした事業部制組織)である。また、人事制度においても、権限を与えるかわりに厳しい責任を課すべきといえる。すなわち、結果に対する責任を評価制度にきちんと反映させることが、組織の運営には必要となる。

一方で、レディメイド型プロダクトを扱う企業において、マーケットからは同機能のプロダクトをいかに低コストでつくるか、という問題をつきつけられることになる。こうした低コストを実現するうえで重要なポイントは作業効率である。同じプロダクトを作り出すために無駄を徹底的に省き、特定の作業に習熟することにより効率を上げることが必要なのである。従って、そこに属する人材に要求される知識・スキルは、(ア)特定の作業に対する深い知識、(イ)特定の作業に関連する人々との一定のコミュニケーション・スキル、(ウ)特定の作業に関連する人々に対する一定のコンサルテーション・スキルであり、前述したテーラーメイド型プロダクトを扱う企業の人材に比して相対的に一定の幅にとどめられた知識・スキルを要求することになる。各担当者が定型的な作業を効率良くこなすことができるよう、組織は、営業、生産、購買、管理等、機能別に分割される(機能別組織)。組織全体の業績に対しては、いずれの機能が欠けても成り立たないことから各担当者が平等に責任を負い、また、機能同士の円滑なコミュニケーションがプロダクトの創出には必須であるため、各担当者間の円滑な人間関係が必要となる。このため、全社的な決定を下す経営陣以外は、なるべく上下関係を排した横並びの評価制度が採用されるべきといえる。

上記のような人事制度の違いは、企業文化の違いを生み出すことになる。たとえば、両企業において同じように人事評価をきちんと行ったとしても、スタープレイヤーを褒めたたえることに力点を置く前者に対して、落後者への叱咤激励により引き上げることに力点を置く後者であるように、企業文化が異なる。企業にとって重要な経営資源である人材へフォーカスするポイントが、前者は成績が優秀な者に注目するのに対し、後者は成績が悪い者に注目する、といった違いが出てくる。

一方の企業文化が染みついた企業が、もう片方のプロダクトへ進出することは、過去の成功パターンがまったく通用しない世界に入っていくくらいの覚悟が必要といえる。個人的には、既存の事業ポートフォリオと高い壁を設けて、お互い見えないようにして進めて行ったほうが成功する確率は高いのではないか、とさえ思う。大企業では複数の事業ポートフォリオを有しているため、こうした問題は過去に数多く経験していると思うが、事業を売り買いすることに慣れたこのあたりのマネジメントが上手な外資系企業に比して、家族的経営を好む日本企業はまだまだ多角化をうまくすすめていない気がする。

あなたの会社はどちらが利き手だろうか。

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公的機関のイノベーションと監査業界

公的機関でイノベーションが見られない理由について、ドラッカーは以下の3点をあげている。

 

1.公的機関の成果は業績ではなく獲得した予算により評価されること

これは公的機関では、活動範囲の拡大につながることが成果として評価されることを意味している。企業活動にたとえれば、利益(=売上-コスト)ではなく、売上増加を目的としているといえる。たとえ、利益につながらない活動であっても、売上増加であれば評価されるのが公的機関の特徴のようだ。

 

2.拒否権を持つ多くのステークホルダーの意見により公的機関は左右されること

顧客、サプライヤー、従業員、銀行を主としたデットプロバイダー、株主を中心としたエクイティ・プロバイダーといったおもなステークホルダーを持つ企業では、一般的に顧客がもっとも優先されるステークホルダーと位置付けられる。これに対し、社会保障制度等に見られるように活動の成果と収入が短期的にリンクしていない公的機関は、直接サービスを提供する対象ではない市民をも満足させなければならない。ある事業が開始されれば、運用が不効率であったとしても、そこから利益を得る人間から事業の廃止・修正を拒否されるだろうし、新しい事業を開始するときには、すべての市民からその必要性を疑われるだろう。

このように公的機関は多くの人々の意見に左右されるという特徴を持つため、必然的に意思決定を避ける(=リスクを取らない)ようになってしまうといえる。

 

3.費用対効果により評価されない善行を目的としていること

飢餓撲滅運動のリーダーは、「地球上に飢えている子供がひとりでもいる限り、われわれの使命は終わらない」と言う。彼らにとって、莫大な費用がかかったとしても、飢えた子どもを助けなければならないのである。

善行を目標とすることは、活動の成果があがらなくとも問題としないことを意味している。善行を目標とすることは、どこまでいっても終わりのない行為を要求するものであり、事後的に良否を評価することができないからである。

 

財務諸表監査を行う監査法人も、資本市場の番人として公的な側面が強い組織といえる。そこでは、品質維持(=不正・誤謬(まちがいのこと)を見逃さないこと)を目的としており、その目的を達成するためには費用対効果は考えられていない。また、監査業務がもたらす成果は、不正・誤謬の発生可能性を消し投資家等の投資意思決定に資するという不明瞭なものであり、監査業務の量(=監査報酬につながる)との関連性を明確に把握することは難しい。

オリンパスや大王製紙のような問題が繰り返される中、監査業界でイノベーションを起こすことは難しいのだろうか・・・

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