Skip to content

SMBC日興への処分勧告と独立性の問題

SMBC日興に対してSECからJFSAに対する処分勧告が提出された。同社の営業部門が上場企業による公表前の増資情報を担当部門から入手したうえで、個人投資家らに増資で発行される新株を購入するよう勧誘していた行為が、金商法(インサイダー取引規制)に違反すると判断されたようだ。

金融機関には、チャイニーズウォール(非公開情報を知りうる立場にいる引受部門と営業部門の情報共有がされてしまうと、インサイダー取引に使用されているとみなされかねないことに対応したもので、証券界の自主ルールである。)が存在している。 SMBC日興が行った行為は、このチャイニーズウォールの趣旨に反する行為であったと思われる。

先日、中央三井アセット信託銀行においても同様の問題を指摘されていたが、チャイニーズウォールを飛び越えようとするインセンティブは常に存在している。 複数の事業を有する大きな組織において、外部から入手した情報を社内で共有し、組織全体で活用することは利益率を高める手っ取り早い方法である。 人間の活動において「情報」は最も重要な経営資源のひとつであることが、その理由のひとつである。例えば、基軸通貨を有する米国は、世界中の米ドルの動きを把握できるため、マカオにある北朝鮮の資金口座を凍結することができたとも言われている(カネの動きは、交換という経済活動を表象している)。

今回の記事を見て、リーマンショックを境に、自由資本主義の限界や金融機関のモラルハザード等さまざまな理由から、情報の取扱いに対する当局の監視の目が強まっていることを感じた。

我々公認会計士に対する独立性を確保するための規制(利害関係のあるクライアントの監査を受嘱することはできない。)も同様の趣旨である。先日、ECが監査の規制の見直しに関する報告を提出した。その内容に、コンサルティング、税務等のサービスを行う大きなネットワークに加入しながら、大規模な上場会社(時価総額10億ユーロ超)の監査を行うことができない、との規制案があった。すなわち、監査以外の収入・関係をクライアントと持つことを一切認めず、公認会計士に各サービスへの専業化を促すものと感じた。

これと同様の規制が金融業界に導入された場合、チャイニーズウォールが設定される事業ごとに人的関係、資本関係等のない事業体へと分離させられることが予想される。金融機関におけるユニバーサルバンクという戦略が近い将来終焉を迎えるとともに、その他の産業においても強固な個人間の信頼関係に基づく緩やかな取引関係が今後はビジネスの鍵になるような気がした。フェイスブックのような個人間の信頼関係に基づく緩やかな関係をつくるツールが、もてはやされているのもそうした時代の流れを反映したものなのか・・・