Skip to content

決算書とステークホルダー

企業が存続していく上で次の五者(ステークホルダー)は絶対欠かせない存在である。

(1)顧客・・・製品・サービスを提供し、売上金を受け取る

(2)サプライヤー・・・製品・サービスの原資(原材料、外注先からの労働力等)を受け取り、仕入代金を支払う

(3)従業員(正確にはその他経費の支払いの相手先も含むが、ここでは最も重要なステークホルダーとして従業員に絞る)・・・労働力を受取り、人件費を支払う

(4)銀行(デット・プロバイダー)・・・有利子負債を受取り、元利を支払う

(5)株主(エクイティ・プロバイダー)・・・リスクをとる資本を受取り、出資・配当を支払う

すなわち、顧客とサプライヤーとの交換により、製品・サービスの骨格ができあがり、さらに従業員が加わり事業(ビジネス)ができあがる。まだこれでは企業になりえない。なぜならば、顧客から受け取る売上金でサプライヤーや従業員に対する支払いを行うが、通常ビジネスにはキャッシュフローのミスマッチが当たり前だからである。例えば、顧客からの入金は製品・サービスを提供してから3か月後であるのに、サプライヤーへの支払いは翌月、従業員への支払いは毎月、なんていうケースがある。この資金繰り上のミスマッチを銀行と株主の資金でどう埋めるか、という問題は実際の経営上はとても大事な問題である(資金が枯渇したら終わりであり、黒字倒産ということもある。cash is king)。

上記のとおり、重要なステークホルダーたちと、重要な経営資源とその見返りを交換しながらビジネスは成長していく。

ここで注意しなければならないことは、適切な交換関係を維持できなければ企業は長期的に成り立たないということである。例えば、本来請求すべき金額を顧客に請求できなければ、仕入代金、人件費、元利金の返済、株主への出資・配当の払戻しのいずれかにしわよせがくる。適切な交換が行われないと知ったステークホルダーは、企業に必要な経営資源を提供することはなく、必然的に企業は成り立たなくなる。

経営(マネジメント)とは、この重要なステークホルダーたちとの交換が適切に行われていることを常にチェックし、修正することにその本質がある。

決算書は、彼らのとの交換関係を数字で表現してくれる便利なツールである。

・売上総損益=顧客との交換を表現する売上-サプライヤーとの交換を表現する売上原価(製品・サービスの質を表現。顧客・サプライヤーとの交換関係が誤っているケースでは適切な売上総利益を確保できない(もしくは売上総損失))

・営業損益=製品・サービスが持つ付加価値である売上総損益―従業員との交換を表現する人件費(ビジネスの質を表現。従業員との交換関係がおかしい場合、適切な営業利益にならない(もしくは営業赤字)

きちんと営業利益が出ていなければ、企業は存在意義がない。ビジネスをやればやるほど持ち出しが増え、銀行、株主への支払利息・元本返済や配当・出資の払戻しが適切にできなくなるのである。

経営者の第一義的な責任は、(1)適切な営業利益を出せているのかをチェックし、出せていないもしくは出せない見込みに対して、(2)顧客、サプライヤー、従業員との交換関係をもう一度見直す、ということにある。

みなさんの経営する企業もしくはステークホルダーとして関係を持つ相手先はどうでしょう?